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希望舞台の出会い

「先生」はお寺の和尚さん

長野県飯山市

「今日は町内のゴミ清掃の日なんです。」しわだらけの作業着?姿で岩上先生は現れた。由井さんの学生時代の後輩で同じ演劇部だった。お寺のご住職さんで小学校の先生もしておられる、「年取ってるけど新米和尚なんです。長いお経を覚えるのも大変」と赤くなってニッと笑って頭をなでた。照れたり可笑しかったりすると顔を真っ赤にして頭をなでながら大きな口で優しい目をして笑う。一生懸命な時は口をとんがらせて言葉をつまらせながら赤くなって汗をふきふき話す。「和尚さん」も「演劇」も似合わない小学校の先生がぴったりの岩上先生だ。お寺は二軒もあるのに一軒は檀家のいないお寺、もう一方のお寺は檀家が三十件ほどしかないが地域の自治会の人たちが「廃寺にしないでほしい自分たちも管理するから」と嘆願されていた。奥様も役所で働らき、畑の世話もしている。
 「お葬式はめったになく一年に一回あるかないかなのでたまにお葬式が出ると、ひとつしかない衣がどっちの寺にあるのか探すのに往生するんです。」「東京に息子がいるけれど寺の行事には帰って来ないけど近所の神社の祭りには飛んで帰ってくるのです。」と、先生の一言一言が可笑しくて何処か悲しくて温かくて芝居のモデルにしたいと思った。その先生と何年振りかでお会いして又芝居の上演のお世話になった。学校は退職され和尚さん一本の生活になっていた。真っ先に聞いた「衣は?息子さんは?」ご子息は僧侶になり仏教にのめり込み諸国修行でお寺に帰って来ない。衣は困らないだけ各種そろっていると。檀家のいないお寺の方にも檀家さんが出来ていた。 でもご自身がC型肝炎の治療中だった。そんな先生に無理はお願い出来ないのに結局先生が雑事を引き受けて下さることになってしまった。
 公演直前の大切な会議の時「一年にあるかないかのお葬式が出てしまいました」と皆をなごませながら中座された。公演は盛況で終わった。打ち上げ会で赤い顔して優しい目で大きな口で笑っておられる先生の姿が高村光太郎の「牛」の詩と重なった「牛はノロノロと歩く、牛は野でも山でも川でも谷でもまっすぐに行く…」。

記・玉井 徳子(2014.01.01発行 つうしんNO.53より)